不可能を
可能にする技術
ヒートシンクのバリレス加工に
新たな発想
デバイスに取り付けるヒートシンク。通常のプロセスは『抜き加⼯』を⾏なったあと、バレル加⼯を⾏い、バリを取り除きます。このプロセスで品質にはまったく問題のない製品を量産することができます。
しかし、あるとき難しい注⽂が届きました。
『バリが出ないこと』『表⾯に傷がないこと』を両⽴しなければお客様からOKが出ない、納期まで時間がない、なんとか解決策を⾒つけて量産体制を実現できないか・・・。
バリがないことと傷がないことをご要望することは当然のことなのですが、通常のプロセスで⾏うバレル加⼯の表⾯の細かな傷さえ、今回のお客様からは許されなかったのです。
まったく別のプロセスで対応するしか道はありませんでした。
ソリューションの発想は、傷の出ないバレル加⼯の技術を追求するのではなく、『バリを出さない』技術を追求することにありました。
様々な⽅式を試してみましたが、コスト、納期、品質を満たすものがなかなか現れない中、⼀筋の光が⾒えました。
通常の『抜き加⼯』は、素材を⼀⽅向に打ち抜く⽅式で、打ち抜いた⽅向にバリが出るのは当然のことでした。このバリを出さないために、両⽅向から打ち抜くことを考えたのです。ヒントは『カシメ加⼯』にありました。
カシメ技術は、素材を完全に打ち抜かず、半抜きの状態にします。この状態で、逆⽅向から打ち抜いたらバリが出ないのではないか、という発想です。
発想は正しかったとしても、カシメ品とヒートシンクではサイズが違う、狙った品質が実現できるのかは冒険でした。
結果は、求めていた品質に限りなく近いものでした。
細かい調整を⾏い、試作品はお客様のご要望を満たすものがようやく準備できました。
問題は納期。今から量産体制を整えていたら納期を過ぎてしまう。
エノモトが選んだ道は『試作設備で量産する』という道。通常2〜3万個を⽣産することを想定して試作設備は⽤意されます。この設備で10万個以上を量産するのです。
納期に間に合わせるために昼夜を問わず⽣産し、品質を落とさないために通常プロセスよりも検査の頻度を多くしました。
結果として、お客様がご要望するコスト、納期、品質を実現することができました。
今ではこの技術を『プッシュバック⽅式』と呼び、バリレス加⼯の⼀技術として⽤いられることが多くなってきました。
この⽅式により、これまでのプロセスと⽐較して『品質が向上した』『バリ取りプロセスの削減によるコストの削減』を実現することができました。
お客様のご要望に応えようとする技術者の発想・技術により⽣み出された、古くて新しい技術なのです。